すでに大きなショックを受けている方もいらっしゃると思いますが、2020年に6月にフォトストック 大手のシャッターストック(shutterstock)はロイヤリティの実質的な大幅な引き下げを行いました。
Shutterstockの新しいロイヤリティ(料金)システム
上の表はレベルが上がるとロイヤリティが上がる仕組みで、何ら問題がないように見えます。しかし、痛い落とし穴があることを後述します。
このほか、毎年1月にレベルがリセットされ全ての人がレベル1になるということが盛り込まれました。
私が経験したロイヤリティ引き下げの結果
レベル2の時(2020年5月)
私は2020年5月現在でレベル2でした。6月からスタートする新しいロイヤリティ表を見てそんなに影響はないだろうとたかをくくっていたのですが、新システムが始まったとたんこれはかなり深刻だという事に気づきました。
さて、新システム前には最低でも一枚の写真のセールスにつき0.25ドル稼げていました。ところが、最低金額は0.1ドルに引き下げられ、0.1ドル(または0.1ドル台)で売れることがほとんどとなりました。(下図参照)
追記:2021年3月の追記です。この傾向はますます強くなり、なんと連続21回0.1ドル台で売られるという悪夢のような状況を経験しました。
レベル3になったがどうなったか(2020年6月)
6月にレベル3になったのですが、この傾向は変わらずです。私よりもレベルが高い人が「全ての人がレベル1にいるみたいだ」とフォーラムに投稿していたのに頷けます。
shutterstock は2年目ということもありコロナ危機の中でも売上を伸ばしていたのですが新システムが開始した6月にそれは止まり、下り坂に。
コントリビューターの怒り
shutterstock のフォーラムではコントリビューターからの怒りのコメントが多数投稿されました。少し紹介します。
何これ、何なの?
これは、私の人生で見た最も貪欲な資本主義です。冗談ですか?そうであったとしても、笑えない。
私と友人はこのひどい決定後にアカウントを削除すること決めることでしょう。
シャッターストックさん、直近のロイヤリティ体系に戻ってください。私たちはコンテンツを作成しているんんですよ。これは強迫で、不公平なパートナーシップとしかいいようがありません。
あなたこそ、どんどん貧乏になっていきますよ。私たちの10年間の努力の代わりにもっとお金がほしいのですか。恥を知ってください。これが、醜い間違った道に進むフォトストックの最後の場所でありますように。私たちがここにいるから、あなたもここにいるんです。それを忘れてしまったのですか。
ほんとに信じられません。
コロナが流行している時期に、そして人が助けを必要としているときに、コントリビューターが浮き続けられるようにサポートしてください。シャッターストックは、この会社に何十億ドルも稼がせてきた人たちへの支払いをカットすることを決めているのですよ。全く邪悪で理解に苦しみます。
企業がいつも金儲けばかりを考えていて欲深いとは考えていませんが、この危機の中で私たちが沈んでいくときに私たちの喉元を掻っ切るのは卑劣です。
シャッターストックは仕事を正しく行う方法を知らない人たちによって経営されていますね。
5月31日に私のアカウントをロックすることに同意します。
(引用元:https://forums.submit.shutterstock.com/topic/100133-new-earnings-structure-for-contributors/page/16/)
そのほか、10年以上投稿を続けてきたコントリビューターが「初めてフォーラムに投稿しますがが今回の改定はあまりにも酷すぎる。私のイラストは0.1ドルですか?」といった内容のコメントを出していたり、 Adobe Stockに引っ越そうとか、ポートフォリオを無効にするといった措置をとったと言っていた人もいました。あまりにも怒って「あくどい企業め!」「サイテー!」などの強い言葉で罵っていた人もいました。
買い手側からの「直近のロイヤリティ改定の結果、お気に入りだったコントリビューターがいなくなってしまった」といったコメントもありました。
シャッターストック側からの説明が的を射ない理由
コントリビューターの怒りの声にシャッターストック側はこう説明をしています。
(引用元:https://forums.submit.shutterstock.com/topic/100133-new-earnings-structure-for-contributors/page/16/)
経営側は、新しいロイヤリティモデルは、すべてのコントリビューターに公平な機会を与えることを目的としているとしていますが、レベル6になっても常態的に0.1ドルの売り上げであることの説明にはなっていません。
私が分かることは、レベル3の私がレベル4になっても状況は変わらず、ほとんどのコンテンツが0.1ドル(または0.1ドル台)で売られるだろうということです。
この支払い体系でやる気のでる人いるでしょうか?
(出典:https://forums.submit.shutterstock.com/topic/100133-new-earnings-structure-for-contributors/page/16/)
株価と財務状況からみる経営者側に対する私の推測
これは私の勝手な推測ですが、多くのコントリビューターと同様に、経営陣は自分たちさえ稼げれば良い、今までコントリビューターがアップロードしてきたプロパティは全部自分たちの財産と思っているのかなと感じました。
shutterstock の財政状況が悪くて今にも倒産しそうだと言うのであれば料金の引き下げもしょうがないと思うのですが、どうやらそうでもなさそうです。
shutterstock のCEOは、株主に対して会社の増収のパフォーマンスのためにこのような措置を取ったのではなんて声もありましたが、こういう声があがるには理由があります。
下はここ1年のシャッターストックの株価です。今年の6月末ごろから8月に向けてのこの異様な株価の上昇はどうでしょうか。
この推測はあたっていて、下は、8月12日時点で見た四半期財務情報です。純利益が前年比475.54%アップしていますが、このお金どこから稼ぎだしたのでしょうか。
本業(フォトストック業)で稼いだお金は収益の方をみないといけませんが、コロナの状況下で前年比マイナス1.55%ですんでいるのは、やはり6月からの新体制でコントリビューターの取り分をぐっと下げたことによるかもしれません(あくまで私の推測です!)。(でも不思議なのはPIXTAやAdobeでは私のコンテンツの売り上げが3~4月期はずいぶん下がったのに対してシャッターストックは右肩上がりに伸びていたんですよね。もともと値段が安いシャッターストックはこの時期でも売れているのかなと思っていました。だから、コントリビューターの取り分をここまで下げるというのはおかしいと思います。)
無理を強いすぎる企業の末路とは
今回の件で去年(2019年)の ZOZOを思い出してしまいました。 2019年に ZOZO は参加しているアパレル企業に大幅な値引きを要求してそっぽを向かれました。これで大手のワールドが離脱しまいました(今は戻っていますが)。そしてカリスマ社長といわれていた前沢さんはZOZOを離れ、ヤフー傘下に。この問題で揉めている時にZOZO は地雷を踏んでしまったなと思いました。人の怒りを買いすぎたり、人を犠牲にしすぎたたら、会社も危なくなるということです。プラットフォームから売り手がいなくなったら終わりですよね。
欧米の経営トップは腰掛でやっている場合が多いですよね。株価を上げるということは「経営手腕が優れている」というアピールができます。これは一時的にでもいいのです。自分の手腕をアピールしてもっと条件のよい会社に移るということは常套手段ではないかと思います。自分が去った後で構造的な問題で株価が結局下がっても、次の経営陣の責任になりますから。コントリビューターを犠牲にして自分たちだけ利益を上げている構造は搾取としかいいようがありません。この構造的な問題はじわじわとこの会社をむしばんでいくのではないかと思います。
シャッターストックさん、自分の足元はコントリビューターによって築かれているのを忘れないでくださいと言いたいです。
英語のサイトでは、最近(2021年)コントリビューター8000名が署名をして元の報酬形態に戻すよう嘆願しているとのことでした。
詳しいロイヤリティ表がみつからない
残念ですが詳しいロイヤリティー表を私はまだ見つけられていません。(見つけたら載せますね。)コントリビューターの怒りについても、Googleで普通に検索していてはでてきません。(隠しているのかな・・・と思ってしまったのは私だけでしょうか。)
自分の売り上げの推移や他の人のコメントをみていても、今回のロイヤリティ改定はかなりトリッキーと言えます。単純なロイヤリティー表を見て、稼げると思ってがんばって投稿したのにレベルが上がっても0.1ドルという売り上げに裏切られた気持ちになるのではないでしょうか。
私も含め全ての人が0.1ドルという価格で写真を売っている状況を見ると、ほとんどのセールスが0.1ドルになる設定になっていると思います。
たまに2ドルを超える値段で売れることがありますが、それは契約人数がかなり少ないプランで購入した人か、ノープランで新規で購入した人なのではないかと推測しています。(そうだとしても、他のフォトストックだったらきっと1枚1000円を超える売り上げにはなっているでしょう。)
今回のロイヤリティ改定で私が決めたこと
今回のロイヤリティ改定でシャッターストック対する信頼が私の中で地に落ちてしまいました。shutterstock に関しては改定後はコンテンツをアップロードしていません。Shutterstockから「チャンスを逃さず報酬を得ましょう」というメールも来ますが、「じゃあ、コントリビューターにもっと敬意を払って」と思ってしまいます。
あと、もしもの時のために今まで稼いだお金を振り込んでもらうよう申請しました。(批判的なコメントをした人のアカウントが停止されたという英語の記事をよんだのと、将来的なシャッターストックの価値を想像しての行動です。)
シャッターストック始めるべき?続けるべき?
今回の改定でshutterstock を続けなさいともオススメとも言えなくなりました。
shutterstock を続けるにしてもこれから始めるにしてもこうした料金体系で行われているということを頭に入れて活動することが大切かと思いました。
日常的な写真が一番売れているフォトストックだったので残念です。コントリビューターの意見に真摯に耳を貸してWin-Winになるような料金体系にしてほしいと思います。
私は今後も PIXTA とアドビストックには投稿を続けるつもりです。ただ、フォトストック業界は数年前から値下げ競争にさらされているので、値下げはどの会社でも起こりうると思っていた方がよさそうです。
追記:2020年の年間収益報告
2020年12月末となりました。その後、売り上げは少し回復しました。2020年の売り上げは、168ドル、総ダウンロード数542枚、レベル4となりました。下図は今年の売り上げ傾向です。
ロイヤリティ引き下げ以降一枚も投稿していません。1月1日にはすべての人がレベル一になりますが、ほとんどが10円台で売れるので、あまり変わらないと思います。悲しい・・・・
2021年の追記
2021年3月です。20回以上連続して0.1ドル台の販売を目の当たりにし、この会社にはもう投稿しないとこうという思いを強くしました。
